シンプルに、純粋に、たくましく生きる子どもたち。
天から舞い降りてきた「la la la la」の歌声。< <カンボジアを訪れた菅野よう子さん> 手がけたCM曲が500本以上、と聞けば人気の度合いがわかります。日立の地雷除去機のCMに流れる音楽は、その菅野さんに作曲していただきました。曲を依頼するにあたり、カンボジアでの地雷の実態や日立の取り組みなどをお話し、菅野さんに快諾をいただきました。重くなりがちなテーマですが、現地の映像を見て曲のイメージをふくらませた菅野さんは、"明るくシンプルに、そして懸命に生きる子どもたち"を思いながら曲づくりにあたったといいます。
「問題をトレースするのではなく、その先にある何かを感じたい。CMが伝えたいのも"生きることの素晴らしさ"なのでは…」。
そんな思いが、"裸足で走る子どもたちの笑顔を曲にのせる"という構想につながったようです。現地で音楽録音をするためにカンボジアのシソフォンに飛んだ菅野さんは、限られた時間の中で現状を把握することに努めました。地雷の悲惨な現状が明らかになるなか、3年間甲子園球場の17倍の広さを探してやっと30個地雷を見つけたという現地作業員の信念と忍耐力に気の遠くなる思いがしたそうです。
菅野さんは、撮影地となった学校で、実際に子どもたちと触れ合いました。そこで見たのは、父親の自転車に家族5人がしがみついて移動する姿、学校の教室で当たり前のようにウロウロしている犬。子どもたちは、菅野さんが手にするアコーディオンに驚きつつも音楽につられて踊りだしたり、向けたカメラのレンズに目を近づけて覗いたり、スカートを引っ張ったり。また、近くの沼でとれた魚を木の葉にくるんで燻し焼きにし、バケツに入ったボソボソご飯をみんなで味わったカンボジアでの限りなく素朴で豊かな時間。
菅野さんの目の前にはいつも、それぞれに純粋な人々の逞しさと明るさがありました。
そんな優しい気持ちが心を近づけたのでしょうか。
"melody"という曲に流れる子どもたちの歌声の収録は、思いのほかスムーズでした。言葉は伝わらない、しかしこちらが純粋になれば気持ちは伝わる。 "世界は美しい、笑顔をつくろう"の歌詞をつつむ「la la la la」のコーラスが小学校の教室に流れました。菅野さんにとって、それはまさに、抜けるような青空から舞い降りた天使たちの声でした。
最後に曲づくりについてお聞きしました。「小さな声のやり取りがだんだんメロディーになっていくというイメージが最初にありました。すごくシンプルなやり取りから自然に生まれてくるような音楽でありたいなと思っていました。そしてその通りにできたと思います。頭で曲を作ったというより、聞こえてきた…といったほうが正しいのかもしれません。誰よりも私自身この歌が大好きです。」
教室の窓から飛び出した"la la la la…"のコーラスは、今もカンボジアの子どもたちの胸の中に生きています。